伝統構法の診断評価

 

本日、10件目に調査しました大正時代に建てられた伝統建築構法の住宅

 

の耐震診断の結果をご依頼主へと報告してきました。

 

調査したお住まいは今年調査した中でも一番古く建てられたお住まいで、

 

今年で築98年目となる住宅です。

 

この時代の建築様式は田の字型の続き間で構成され、襖や障子で間仕切り

 

必要に応じて建具を開け放ち、大広間としても使える可変的な間取りが特徴

 

の一つです。構造は主に柱と梁の他、横方向の力(地震力や風圧力のこと)

 

に抵抗する土壁や貫構造、普通の鴨居よりも太い「差し鴨居」といった部材

 

で造られていることも挙げられます。

 

 

今回診断したお住まいも、そうした造りの建築でありました。

 

診断の結果では、壁が少なく窓や建具が多かったために構造強度が持てず、

 

評価の低い結果でした。でも、今回の診断は現在の建築工法(在来軸組工法)

 

の基準で判定した場合の結果ですので、診断結果はあくまで目安です。

 

  

一見評価の低く見えるこの伝統構法の造りの建築ですが、実は現代の住宅

 

 にはない、変形能力や減衰性能という特性が与えられています。

 

 

変形能力とは、横から力を加えられた時にその力のエネルギー(大きさ)に

 

応じて変形する特性のことです。

 

一方、減衰性能とは、エネルギーによって加えられた力に比例して働く

 

ブレーキのような性能のことです。

 

この変形と減衰という二つの働きによって、地震からの揺れに対して

 

損傷や倒壊を遅らせる性能が伝統構法の造りの中に与えられています。

 

 

現在の住宅は、揺れに対して踏ん張ることで耐え、一方で伝統型の住宅は

 

揺れに合わせて粘って耐える(踏ん張らない)という違いです。

 

耐えることは同じでも、動きや性質はまったくの違いがあります。

 

 

人間でも同じことが言えますが、踏ん張れば踏ん張るほど、ダメージも大き

 

くなるものです。

 

 

古来からの建築には、自然の畏れに対して逆らわず謙虚に向き合い、その中

 

で生まれた最良の知恵と優れた木組みで住まいが造られていることが伺えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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